Stripe Drawingsは鉛筆で描く無数の線の集積により作られるドローイングである。
一定間隔を置いて線を描くこのドローイングは描くと同時に何も描かれていない隙間を刻んでいく行為であるとも言える。線が集まってできる図と余白とが作り出す形体は隣同士で浸食し合い、無数の線と隙間が交互に交じり合いながら画面の中で同時に存在する。
微細な顕微鏡の中や遠く宇宙の銀河を想像したり、霧の出る風景の中に身を置いた時の様に、ものの輪郭、空間の遠近、身体の境界が曖昧になるような景色を描きたいと思っている。ここで描くものは形をとどめる事が無く、実際に触れる事の出来ないものである。フリーハンドで描く線には小さな揺れがおこる、この揺れは線を鉛筆の先で触れたという痕跡であり、また見るものがその揺れを視線でなぞり、自分の経験に置き代えることで作者の身体性を追体験することになる。視線の追体験によって見るものと見られるものとの身体性はつながっていく。
このドローイングは紙に描かれるのみではなく、取り囲まれる壁面に直接描くウォールドローイングとしても展開している。
2010/
Text/ 中西信洋