この作品は朝日が昇る風景、アイスクリームが溶ける様子、コピー用紙が燃え広がって行った焦げ痕など、身の周りでおこる変化を一定間隔で撮影し、透明フィルムにプリントし積層したものである。時間の経過が積み重なった立体物として留める事で、常に消え去っていく過去と現在をあらゆる角度から同時に眺める事の出来る彫刻作品である。
時間はあたかも人間にとって共通のもののように思えるが、人の感じ方はそれぞれで全く別の捉え方をしている。時間そのものは常に形も境目もなく存在し、どこかの一部で留めて捉えることの出来ないものである。この作品をみるとき、画像と画像の間にある時間と空間の隙間を自ら補おうとする行為が生まれる。自らの身体の内で欠落した時間と空間とを常に埋めて行こうとし続ける行為こそが時空間と人間の感覚との関係そのものである。とらえどころのない時間、空間というものを共通の感覚として捉えられるものしたいと思っている。
2010/
Text/ 中西信洋